全国省エネ推進ネットワーク

Vol.1省エネの達人に聞きました

中小企業の省エネ取り組みを進めるにあたっては、さまざまなバリアがあると言われてきました。中でも、「そもそも、誰にどんな相談をすればよいかがわからない」、という課題を解決するために、省エネルギー相談地域プラットフォームが全国で活動しています。その立ち上げから深くかかわっていらっしゃる、省エネルギー界のご意見番、高村淑彦氏に、中小企業の省エネ取り組みを支援する際のポイントをお伺いしました。

高村 淑彦 氏
達人のご紹介 高村 淑彦 氏
<プロフィール>
東京電機大学名誉教授。専門は伝熱工学、熱機関、省エネルギー。
40年以上にわたり、事業所の省エネルギーに関わり、政府関係各種委員を歴任。
省エネ法改正のプロセスに参画。省エネルギー研究の第一人者。

中小企業の省エネを進めるための
三つのポイント

私は過去40年間、さまざまな企業の省エネ診断に携わってきました。業種も業態も規模も様々ですから、その企業の実態にあった省エネの教科書があるわけではありません。手探りする中で経験を積み重ねていく以外にありませんでした。
その経験の中でたどり着いたのが省エネを進めるための三つのポイントです。

「記録する」「観察する」「保守・点検をする」の三つです。

必ずしも設備投資を必要としませんから、中小企業の省エネに適した方法と言えます。

「記録」がなければ、何も始まらない

一つ目のポイントは「記録すること」ですが、なぜ記録が最初のステップになるかと言えば、記録のないもの、数値化されていないものは管理ができないからです。そして記録を一定期間継続してグラフなどに表示すれば、そこに変化が見えてきます。その変化がデータとして活用できるのです。

例えば、ボイラが設置されている現場ではボイラ日誌をつけています。そこには毎日の給水量と燃料の使用量が記録されます。大半の現場ではきちんとつけていますが、ボイラ検査の折の対応のためだけに使われるだけで、データとして活用されていることが少ないのです。

給水量を燃料使用量で割るだけでおおよその稼働効率が分かりますから、その変化を見れば「今日は効率が落ちている」などの発見があり、何が効率の低下に影響したのかを考えることが改善に繋がるのです。

「観察」推測する方法も身につけよう

記録の次は、実際のエネルギー使用量の把握です。エネルギー使用量の把握は、必ずしも計測器を設置しなければならないわけではなく、観察によって推測することもできるのです。

たとえば、温度計に頼らなくとも、近づけないくらい熱いと500℃、触っただけで熱っ!となるのは80℃、しばらく触っていられるのは60℃、という具合に、経験を積んでいくことで、徐々に把握できるようになります。流量を知りたければ流速と断面積の掛算で概算ができます。風速は棒にリボンをつけてなびかせて、そのなびき方でおおよそ把握できます。

「保守・点検」は省エネに直結する

企業を訪問して建屋周辺や工場内を見て回ると、空調の室外機が埃で汚れていることや、蒸気配管のカバーが剥がれて雨水が浸み込んでいる箇所を目にすることがあります。

保守・点検の目的は、設備・機器の安定的な稼働と性能劣化の防止ですから、生産活動そのものであり、エネルギー消費に密接に関係します。適切な保守・点検はエネルギーロスを防ぐので、直接的に省エネにつながります。フィルタの交換や機械の油差しの清掃など、当たり前にできることを地道に継続することが肝要です。

まずこの「記録する」「観察する」「保守・点検をする」という三つの手順を身につけることができれば、自ずと現場の人の「気づき」と「工夫」が生まれ、省エネが進んでいくのです。

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