全国省エネ推進ネットワーク

Vol.4省エネの達人に聞きました

日本商工会議所は、2017年12月、中小企業が「経営改善」と「省エネ」という二つのテーマに取り組むための「アクションプラン」を発表しました。こうした活動の内容について、日本商工会議所のご担当市川晶久氏にお話をききました。

市川 晶久 氏
達人のご紹介 市川 晶久 氏
<プロフィール>
日本商工会議所 産業政策第二部 主席調査役。
全国515ヶ所の商工会議所から地域の中小企業を支援。
経済産業省、内閣府などの審議会にも多く参画。

中小企業における
『経営課題の解決 with省エネ』の
取組促進に向けて

私ども日本商工会議所には全国各地に515か箇所の拠点があり、125万を数える会員企業の経営支援と地域活性化に日々取り組んでいます。会員の9割以上が中小企業・小規模企業で、まさに地域と中小企業をバックボーンとした組織といえます。商工会議所が今後、どんな活動を進めていこうと考えているか、その方向性についてご説明します。

なぜ、中小企業が省エネ対策に取り組む必要があるのか?

2017年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」では、「中小企業の排出削減対策の推進」が位置づけられ、中小企業も温室効果ガス排出削減への貢献が求められています。
日本全体のCO2削減目標は26%とされ、その中でも、業務部門と運輸部門への削減割当てが大きくなっています。CO2排出量に占める中小企業の割合をみると、運輸部門34.4%、業務部門80.0%というデータもあります。
加えて、中小企業は取引先から環境配慮を求められる時代を迎えています。大企業では、調達先へのCO2排出削減目標の義務付けや、二次調達先にも温暖化対策を要請する企業が出現しているのです。

とは言え、中小企業の現場では…

では、現在の多くの中小企業経営者にとって目下の関心事は何でしょうか。いかに利益を上げて、その地域で事業を継続していかれるかなどの経営課題の解決が第一なのです。生産性の向上であり、IT、クラウドの導入であったり、設備・施設の老朽化であったり。足元では人手不足に悩み、技能労働者の高齢化も進んでいます。労働時間の短縮もしなければならないし、後継者もいない。どうやって事業を継承していくか皆さん悩んでいるのが実態です。「省エネ」を考えている余裕がないのが現場の本音です。

こうした経営者に、支援機関は従来からどんなアプローチをしてきたでしょうか。省エネへの取組みを前面に出して、「光熱費のコスト削減につながりますよ」あるいは「儲けられますよ」などと強調しがちだったようです。省エネ自体が目的になったり、高効率設備のへの更新が提案の中心だったりしていたのではないでしょうか。

でも現実には、直近の経営課題としての「省エネ」に対する経営者の優先順位は非常に低く、支援機関と経営の現場でミスマッチが起きていたのです。投資を伴わない運用改善などでも実施率は低く、対策の内容や方法がわからない、メリットがわからないなどがその理由です。大企業では可能でも、経営資源に限りのある中小企業には、発想を転換した異なるアプローチが必要なのです。

実態調査から得られた4つのアプローチ策

そこで日商では、具体的にどのようなアプローチが有効なのかを探るために、2017年3月に801社の会員企業への実態調査を行い、その結果を公表しました。現在省エネに取り組んでいない中小企業の生の声も聞いている点がこの調査の特徴です。そしてこの調査から得られたのが次の4つのアプローチ策です。

1番目はメリットの「見える化」です。省エネ診断など客観的なデータを活用した意識啓発は効果が大きいのです。それを企業の経営改善に役立つストーリー展開の中で提案することです。

2番目は伴走型の支援です。会員企業と密なコミュニケーションを図り、ニーズをきめ細かく把握しながら進めます。適宜、専門家との連携も必要になってきます。

そして3番目が実態に即した取り組みメニューの提供です。この場合、手が出せないような高いハードルの設定は禁物です。

4番目。分かりやすい言葉での解説です。共感を得られる言葉で、とも言い換えられましょう。二人三脚で共に取り組みを進めていく姿勢が大切です。
そして、これらの情報発信では、メールやホームページではなく、紙媒体の方が効果的なことが判明しました。地元メディアや地域の金融機関を通じた経営者へのアプローチも有効です。

『経営課題の解決 with省エネ』を基本コンセプトに

日商では、中小企業の経営者が経営改善と省エネという二つのテーマに取り組むための「アクションプラン」を2017年12月に発表しました。その基本コンセプトが『経営課題の解決 with省エネ』です。
前向きな経営改善や生産性向上の取り組みの中に、省エネの視点を加味ながら、様々な経営課題を解決するとともに、同時に省エネも達成していくという新たなスキームで、今後、全国で展開していく予定です。

例として、4つの経営課題で『with 省エネ』を取り上げました。
①業務の改善with 省エネ:作業の効率化、生産効率の改善、サービスの向上
②利益の確保with 省エネ:コスト削減による利益の確保=実質売上げの向上
③人材の育成with 省エネ:活発なコミュニケーションで企業の将来を担う人材を育成
④新ビジネス展開with 省エネ:省エネへの取り組みから新たなビジネスチャンスの拡大へ
です。

成功のポイントは『スモールスタート&長続き』

これらの課題に、まず経営者に気付いてもらうことが肝心です。そのために「無料省エネ・節電診断」で現状を把握し、取り組みの方向性を把握してもらう。これには外部の専門機関と連携する必要もあります。そして、取り組み内容と手順を決定(計画策定)し、それを社内で共有してもらう。実施の段階においても、日商の経営指導員や専門家も加えた伴走型支援を継続していく必要があります。これら一連の活動を成功させるポイントとして、私たちは『スモールスタート&長続き』という標語を掲げました。おおげさに構えるのでなく、運用改善などできることからはじめて、息の長い活動を展開していきたいと思っています。

地域の経営支援における「かかりつけ医」と「専門医」の役割分担を

商工会議所では、地域における経営者の一次対応機関として、巡回や相談窓口を通じて日々寄り添いながら親身に話を聞いて、経営課題を整理し解決する、いわば「かかりつけ医」の役割を担っています。省エネの専門家ではありません。事業者における具体の省エネ取組など、かかりつけ医が対応できない課題について、PF等に属する省エネの専門家の方々に「専門医」として高度で専門的な支援の提供をお願いしたいと思います。対応が難しい課題は、かかりつけ医から専門医へ、ということです。かかりつけ医と専門医が同じ仕事をするのではなく、それぞれの地域でうまく役割分担をして連携していきたいと思います。

日本商工会議所、『商工会議所環境アクションプラン』を策定。

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